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4月より電子メール等(ラインやFacebookなど)での労働条件通知書送付が可能になりました
労働契約を締結する際、会社は従業員に対し労働条件を明示する必要があります。従来、明示の方法は従業員に対する書面の交付(紙)に限られていましたが、労働基準法施行規則が改正され、2019年4月から、従業員が希望した場合には、FAXの送信または電子メール、ラインやFacebook等の SNS メッセージ機能での送信により明示することも可能になりました。
■対象となる電子メール等
① パソコン・携帯電話端末による E メール、Yahoo!メールや Gmail と いったウェブメールサービス
② +メッセージ等の RCS(リッチ・コミュニケーション・サービス)や、 SMS(ショート・メール・サービス)
③ LINE や Facebook 等の SNS メッセージ機能
※注意1
上記②の RCS や SMS については、PDF 等の添付ファイルを送付することができないこと、送信できる文字メッセージ数に制限等があること、 また、前提である「出力による書面作成」が念頭に置かれていないサービス であるため、労働条件明示の手段としては例外的なものであり、原則として上記①や③による送信の方法とすることが望ましい。
※注意2
従業員が開設しているブログ、ホームページ等への書き込みや、 SNS のマイページにコメントを書き込む行為等、特定の個人が その入力する情報を電気通信を利用して第三者に閲覧させることに付随 して、第三者が特定個人に対し情報を伝達することができる機能が提供 されるものについては、「電子メール等」には含まれない。
■電子メール等で明示するときの注意点
電子メール等で労働条件の明示をするための注意点は以下の2つの要件を満たす必要があります。
1. 従業員が希望していること
従業員の希望に関しては、従業員の希望の有無の確認は個別・明示的に行うことが望ましいとされています。希望していないにもかかわらず、会社が一方的に電子メール等で明示することは法令違反として扱われます。
2. 出力して書面を作成できること(印刷ができること)
必ずしも従業員がプリンターを持っているかどうかまでの確認が求められるわけではありません。一般的に印刷が可能な状態であれば、印刷できると認められます。
→電子メール等での明示は印刷や保存がしやすいよう、PDF等の添付ファイルで送ることが推奨されています。
※その他、データを送信する際は、宛先のダブルチェック・添付データにパスワードを設定するなど、個人情報の取扱いには十分に注意を払ってください。
会社に受信確認の義務はあるの?
ウェブメールサービスやSNSメッセージ機能等による場合、どのような状況となれば明示として認められるかが問題となります。これについては従業員本人の通信端末機器に受信した内容が到達していなくても、メールサーバー等に到達していれば、電子メール等の送信が行われたことを受信者が認識し得る状態にあると判断され、明示されたと認められます。
ただし、労働条件を明示することは、後の労働トラブルを防ぐ目的もあるので、送信後に「○月○日に送信しているので確認してくださいね」など、一言お伝えしたり、受信後は受取確認のメールを返信するように指示をしておいたりするとよいでしょう。
そもそも「労働条件通知書」と「雇用契約書」の違いってなに?
●労働条件通知書とは
労働条件通知書とは、労基法第15条(労働条件の明示)に基づいた事項を企業が労働者に通知(明示)するための書類です。特に署名捺印等は必要なく、一方的に通知する書類となっています。
必ず書面にて明示しないといけない事項は以下の通りとなります。
・労働契約の期間
※有期労働契約の場合には、契約更新の有無および更新する場合の基準に関する事項を記載する必要があります。
・就業場所、従事する業務に関する事項
・始業・終業の時間、休憩時間・休日・休暇に関する事項
・所定労働時間を超える労働の有無、交替勤務制等に関する事項
・賃金の決定・計算、支払い方法、支払い時期、締め日に関する事項
・退職・解雇に関する事項
●雇用契約書とは
労働契約法第4条(労働契約の内容の理解の促進)にて下記のとおり規定されており、労働者を雇用する際に、事業主と従業員の間で交わす契約書です。
- 使用者は、労働者に提示する労働条件及び労働契約の内容について、理解を深めるようにするものとする。
- 労働者及び使用者は、労働契約の内容(期間の定めのある労働契約に関する事項を含む。)について、できる限り書面により確認するものとする。
二部作成し、署名・押印したあと、雇用者と労働者がそれぞれ保管するのが一般的です。
実は、法的には雇用契約書の作成は必須ではありません。
会社が一方的に交付すれば良い労働条件通知書に比べ、雇用契約書では「二部作成する」「署名押印を取り交わす」といった手間が増えますが、労務管理上のリスクを減らすためにも、また、従業員とのトラブルを避けるためにも、雇用契約書は取り交わし作成される事をお勧めいたします。
(※法的には労働条件通知書があれば雇用契約書が無くても問題はありません。)
「労働条件通知書」は当サイトTOPメニューからもダウンロードしていただけます。
まとめ
「労働条件通知書」については、従業員が正社員中心の企業では活用の場面は少ないのかもしれないですが、非正規社員(パート・アルバイト等)を中心に入退社が多い会社の場合には、労働契約の更新のたびに書面を作成し、交付することで多くの手間が必要となり、他の業務を圧迫しかねません。
FAXの送信または電子メール、ラインやFacebook等の等の SNS メッセージ機能での送信が可能となったことで、従業員にとっても受発信の記録が残り、確認しやすく、また会社にとっても紛失しづらい状況になります。
と、一見「便利」で良いことづくめのようにも見えますが、「誤送信による個人情報漏洩」や、「送信したはずなのに相手に届いていない」など・・・思わぬトラブルを招かないためにも電子メール等で労働条件を明示をする場合には、細心の注意を払ってください。
■参考サイト
厚生労働省「労働契約締結時の労働条件の明示 ~労働基準法施行規則が改正されました~」
厚生労働省「改正労働基準法に関するQ&A」
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